研究課題
小型肺腺癌(直径3cm以下)の間質浸潤に関与するマイクロRNAを明らかにするため、EGFR遺伝子変異陽性および陰性の小型肺腺癌の上皮内進展部および間質浸潤部の癌細胞をレーザーマイクロダイセクションにて採取し、RNA抽出をおこなった。バイオアナライザーにて抽出RNAの品質が適切な症例にっき、上皮内進展部および間質浸潤部のマイクロRNA発現パターンをマイクロRNAマイクロアレイにて比較した。その結果、EGFR変異陽性および陰性小型肺腺癌で、それぞれ42種類と8種類のマイクロRNAが浸潤に伴って発現上昇しているとともに、6種類と92種類のマイクロRNAが浸潤に伴って発現低下していることが判明した。また、EGFR変異陽性および陰性小型肺腺癌で共通に変動しているマイクロRNAはこのうちで1つしかなく、EGFR変異陽性および陰性小型肺腺癌で間質浸潤の分子機構がかなり異なる可能性が示された。これら、マイクロアレイで変動の観測されたマイクロRNAから、mir-141,146など、変動の大きいものや文献的に間質浸潤との関係性が実証されるものを選定し、定量的PCR法を用いて上記のマイクロアレイ結果が正当なものであるかどうか検証中である。そのほか、マイクロRNA生成にかかわるタンパク(Dicer、Drosha)の免疫組織化学を肺腺癌病理標本にて施行し、その臨床病理学的意義や、上皮内進展部と間質浸潤部における発現状態の違いを検討している。
2: おおむね順調に進展している
肺腺癌の間質浸潤に関与するマイクロRNAをマイクロアレイにて同定しえた。臨床症例を用い、実際に間質浸潤に関与するマイクロRNAを明らかにしたことは、癌浸潤の研究上、重要な成果を上げたと考える。一方、研究代表者の異動に伴い、当初計画されていたTissue Microarray(TMA)を用いた研究では成果を上げるにいたっておらず、本研究最終年度である平成24年度はTMAを用いた研究を重点的に進める必要がある。総体として、研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
本年度までの各研究を継続進展させるとともに、研究代表者の異動に伴い進展に遅れのみられるTissue Microarray(TMA)を用いた研究を重点的に進める。そのため、肺がんTMAの作成などを現所属(秋田大学)にて来年度(平成24年度)前半に終了させることを目標とするとともに、TMA作成に遅滞がみられることに備え、市販のTMA購入なども検討課題とし、当初の計画を達成する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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