肺腺癌は中心部で瘢痕様病変を形成し、間質細胞との相互作用により、浸潤、転移を起こすことが知られている。本研究では肺腺癌の間質浸潤部と上皮内進展部をマイクロダイセクションにより分取し、マイクロRNAマイクロアレイ解析やリアルタイムPCR解析により、肺腺癌浸潤にかかわるマイクロRNAを同定した。この結果は、in situ hybridizationにより病理組織学的にも確認しえた。 同時にEGFR遺伝子変異を有する肺腺癌とEGFR遺伝子変異を持たない肺腺癌とでは、間質浸潤に伴うマイクロRNA発現変動のパターンが大きく異なることも見出した。 間質浸潤にかかわるマイクロRNAのうち、上皮内進展部との比較においてとくに変動が激しく、かつ癌進展との関係が文献的にも示唆されている数種のマイクロRNAについては、その発現の強弱が症例の予後と相関することも確認された。また、これらのマイクロRNAの候補標的遺伝子を同定し、その意義を肺腺癌臨床検体および肺腺癌細胞株で検証した。 一方、肺腺癌間浸潤には癌(上皮)のみならず、間質細胞も大きな役割を果たしているものと推定されている。本研究では、上皮と間質の対比も行い、肺腺癌の間質でmiR-21が筋線維芽細胞に過剰発現していることをin situ hybridizationによって明らかにした。 以上の結果から、本研究では肺腺癌間質浸潤におけるマイクロRNAの果たす役割を解明し、所期の研究目的を達したものと考えられる。
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