研究概要 |
報告者らは、EBウイルス(EBV)関連胃癌は、癌抑制遺伝子あるいは癌関連遺伝子のプロモーター領域に特異的なDNAメチル化異常が高頻度に見られ、胃癌の中でも特徴的な一群をなしている事を見出し報告してきた。DNAメチル化異常に関与するEBウイルス側の要因に関しては,EBVの膜蛋白であるLMP2A(Latent membrane protein 2A)がSTAT3の活性化を介しDNMT1の発現を上昇させ、DNAメチル化異常に関与するという事を見出し報告した(Hino et al., Cancer Research 2009)。これらEBウイルス関連胃癌研究を通して、STAT3(signal transducer and activatorofのtranscriptin 3)構成的活性化がEBウイルス関連胃発癌,進展に重要である可能性を見いだし研究を遂行してきた。その中で、STAT3の活性化を抑制的に制御する分子であるSOCS3 (Suppressor of cytokine signaling 3)が、EBV感染によりプロモーター領域のメチル化を介して発現が低下ないし消失している事をヒト胃癌切除検体や細胞株を用いた実験で見出した。すなはち、SOCS3の発現低下はSTAT3をさらに活性化しSOCS3がSTAT3/DNMT1を介するDNA異常メチル化経路に関与し、メチル化異常を亢進させ、発癌ないし癌の進展に寄与している可能性を見出した(投稿準備中)。SOCS3分子を用いた遺伝子治療の開発が進んでいることから,SOCS3に着目した治療法は、従来治療が困難であったDNAメチル異常を伴う癌への有効な治療法の一つになりうる可能性を有している。
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