研究課題
癌細胞の間質接合面に形成され細胞外基質分解能を持つ浸潤突起は基底膜の破壊・消失を介して浸潤・転移に関係する。浸潤突起のマーカーであるアクチン結合分子actinin1,cortactinの肺癌組織における局在を免疫組織学的に検索したところ、正常気道上皮では頭頂部に局在するが、浸潤性腺癌細胞では基底部間質接合面に局在が変化しており、癌細胞における細胞極性の異常が浸潤突起の形成を介して浸潤・転移へ関与している可能性が示唆された。極性異常の機序を明らかにするため、極性形成に関与する分子複合体、par3/par6/atypical protein kinase C (aPKC l/ζ)、scribble,Lglとその結合分子の肺腺癌組織、培養細胞における発現をcDNAarray database検索、RT-PCR法、免疫組織学的方法によってスクリーニングした。その結果,par6/aPKCに結合し細胞極性、アクチンの伸長、細胞分裂に関係するRhoGDP/GTP変換分子であるect2のmRNAが肺腺癌において過剰発現していた。免疫組織学的検索でもect2は肺腺癌27例中11例で腺癌細胞の細胞質に過剰発現しており、actinin1の間質接合面への局在との相関傾向を認めた。ect2の過剰発現がアクチン結合分子の局在と基底膜の分解・細胞運動の制御を介して肺癌の浸潤・転移に関係している因子の一つである可能性が示唆された。一方、Par3の機能を抑制すると報告されているEGFR遺伝子の変異とactinin1,cortactinの細胞内局在との相関は認められなかった。極性形成分子aPKCの下流で働くinterleukin6が破骨細胞の分化を介して扁平上皮癌の骨破壊に関係していることを明らかにした。
すべて 2010
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American Journal of Pathology
巻: 176 ページ: 968-80
日本呼吸器外科学会雑誌
巻: 24 ページ: 524