研究概要 |
本年度は、2006年から2010年まで金沢大学医学部付属病院で切除された胃癌278症例に関して,癌細胞のERBB2蛋白過剰発現と遺伝子増幅の頻度をIHC法(Immunohistochemistry)およびFISH法(Fluorescence in situ hybridization)を用いて調べた.IHC法においては,組織標本の代表的割面で連続切片を作成し,ERBB2蛋白に対するpolyclonal抗体を一次抗体として用いた.胃癌細胞の細胞膜に一致して陽性像が得られた場合,これを過剰発現ありとして,さらにFISH法を追加した.FISH法では,ERBB2遺伝子に特異的に結合するbacterial artificial chromosomes RP11-62N23をプローブとして用いた. その結果、IHC法ではERBB2蛋白の過剰発現は278症例中,41例(14.7%)で認められた.FISH法ではERBB2遺伝子の増幅は41例中39例(14.0%)で認められた.IHC法とFISH法の一致率は95.1%と高率であった。胃癌の組織型と遺伝子増幅の関係をみると,intestinal typeでは19.4%(33/170)に増幅がみられたが,diffuse typeでは5.6%(6/108)にとどまり(p=0.02),これまでの報告と同様の結果であった. 来年度は、症例をさらに蓄積するとともに,リンパ節転移陽性例でのリンパ節組織標本におけるERBB2遺伝子増幅の有無,粘膜剥離切除標本(Endoscopic submucosal dissection)を用いて,粘膜内癌におけるERBB2遺伝子増幅の頻度を調べる予定である。
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