研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き金沢大学医学部付属病院で切除された胃癌症例で,胃癌細胞のERBB2およびEGFR蛋白過剰発現と遺伝子増幅を免疫組織化学およびFISH法を用いて検討した.リンパ節転移を有する症例では,転移リンパ節も含めて検討した.総症例数は475例で内視鏡的粘膜切除術および粘膜下層剥離術による切除例も含めた.男性338例,女性137例で平均年齢は65.0歳.深達度については粘膜内にとどまるM癌は209例(44.0%)で,SM癌と併せた早期癌(stage T1)症例は310例(65.3%)と半数を越えた. ERBB2陽性胃癌は475例中50例(10.5%)で認められた.組織型ではtubular adenocarcinomaが50例中39例(78%)と最も多く,poorly cohesive carcinomaは50例中4例(4%)と少なく,ERBB2遺伝子増幅と組織型には相関がみられた(p=0.008).一方,性別,癌占拠部位,T因子,N因子とは相関はなかった.リンパ節転移を有するERBB2陽性胃癌は16例で,うち転移リンパ節にERBB2増幅陽性細胞を認めた症例は11例(68.9%)であった.原発巣同様,転移リンパ節に関してもERBB2遺伝子増幅に関して癌細胞のheterogeneityが観察された. EGFR陽性胃癌は475症例中17例(3.6%)で,性別,組織型,癌占拠部位,T因子,N因子とEGFR遺伝子増幅には相関はみられなかった. 来年度はこれまでに入手した胃癌新鮮組織からDNAを抽出し,multiplex ligation-dependent probe amplification法を用いて,網羅的に癌遺伝子の増幅を検索し,ERBB2遺伝子増幅との関連を検討する予定である.
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