研究概要 |
胸腺腫52例(A型5例、AB型14例、B1型6例、B2型5例、B3型12例)を免疫組織学的に検討した。胸腺腫では腫瘍随伴細胞は腫瘍細胞の構成する微小環境に対応して安定しており、胸腺腫の組織発生を検討する上で有用で安定な指標であると考えられる。随伴細胞として重要なのは未熟T細胞(胸腺細胞)、樹状細胞(DC)およびマクロファージなどで、胸腺細胞は皮質特異的でCD99陽性のリンパ球として、DCは髄質特異的で、fascin陽性、HLA-DR陽性の成熟DCとして認識される。マクロファージ系細胞には筆者らが発見した胸腺皮質樹状マクロファージ(TCDM)と通常型マクロファージがあるが、TCDMは皮質特異的でfascin陽性、HLA-DR陰性である。そこでこれらの随伴細胞がそれぞれのタイプの胸腺腫にどのように分布するのかを免疫組織化学的に検討した。A型胸腺腫ではこれらの随伴細胞はいずれも認められなかったが、fascin陰性、HLA-DR陽性の未熟DCが瀰漫性に分布していた。AB型胸腺腫では、B領域に多数の胸線細胞が集族する皮質様領域が確認されたが、TCDMは未熟で非機能的形態を示すものが多く、さらに狭い領域に成熟DCが集族する髄質様小領域が確認された。B1およびB2型胸腺腫では多数の胸腺細胞と正常胸腺皮質のTCDMに酷似する良く発達したTCDMが分布する皮質様領域が主体で、多数の成熟DCが高密度に分布する髄質様領域が確認された。B3型胸腺腫ではTCDMと胸線細胞が出現する分化型、TCDMのみ出現する中間型、どちらも出現しない未分化型に細分類可能であった。この結果から、A型は皮質髄質の分化以前の未分化な上皮、AB型は未熟な胸腺オルガノイド、B1,B2型は成熟胸腺オルガノイド、B3型は退形成性の胸腺オルガノイドであることが推定された。以上の結果を関係学会で報告した。
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