研究概要 |
前年度の成果に踏まえて、B3型胸腺腫の細分類の妥当性とAB型胸腺腫の特異性について免疫組織化学的に検討した。まずB3型胸腺腫については、前年度では胸腺細胞(Thy)と胸腺皮質樹状マクロファージ(TCDM)の出現頻度によって3クラスに亜分類可能であることを明らかにしたが、さらに症例を統計的解析が可能な数まで増やして、これらB3胸腺腫亜型の様々な予後に関わる免疫組織学的マーカーの発現について比較・検討した。具体的には、B3型胸腺腫はThyとTCDMの分布パターンから、Class-1:ThyもTCDMも比較的多数出現する亜型、Class-2:Thyは殆ど出現しないが、TCDMは比較的多数出現する亜型、Class-3:ThyもTCDMも殆ど出現しない亜型の3亜型に細分類することが可能で、それぞれのGLUT-1,cKIT,CD5,MIB-1,p53などの胸腺癌マーカーの発現の有無、程度を免疫組織学的に検討した。さらにCD205やclaudin-1などの胸腺皮質上皮細胞(cTEC)および髄質上皮細胞(mTEC)の分化抗原の発現の有無、程度、MIB1-index(%)についても検討した。その結果、B3/C1とB3/C2は比較的予後の良いB1,B2型胸腺腫に準ずるものであるのに対して、B3/C3は高悪性の胸腺癌に類似するフェノタイプを示す事が明らかになった。 さらに、A型胸腺腫は正常mTECにはない特徴が幾つも検出された。また、A型胸腺腫症例の中に1例のmetaplastic thymomaとすべき症例があった。この症例は短紡錘形でサイトケラチン陽性、ビメンチン陰性の上皮性の腫瘍細胞と、長紡錘形でサイトケラチン陰性、ビメンチン陽性の線維芽細胞様腫瘍細胞のモザイク構成であったが、AB型胸腺腫のA部分はこの線維芽細胞様腫瘍細胞に酷似していることが判明した。このことから、AB型胸腺腫は単なるA型とB型の混合腫瘍でなく、独自の腫瘍である事が確認された。以上の結果を日本病理学会、国際肺癌学会、日本胸腺研究会にて発表した。
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