研究概要 |
2010、2011年度の結果を踏まえて2012年度は特にB3型胸腺腫と胸腺癌、肺扁平上皮癌の鑑別と、AB型胸腺腫の更なる詳細な解析を症例を増やして行った。まず、B3型胸腺腫の特徴として症例ごとにthymocyteやTCDMなどの非腫瘍性の胸腺皮質環境細の出現頻度に大きな違いがあり、これらが比較的多数出現するサブタイプ1と両者が殆ど出現しないサブタイプ2に分類することが実際的と考えられた。サブタイプ1はフェノタイプ上B1、B2型胸腺腫に類似し、胸腺癌との鑑別は容易であった。これに対してサブタイプ2は胸腺皮質上皮分化抗原の発現に乏しく、フェノタイプ上も胸腺癌との鑑別は難しかった。その中で、胸腺プロテアソームβ5t、c-kit, CD5が鑑別に特に有用であることが判明した。β5tはサブタイプ2B3型胸腺腫にほぼ特異的に発現したのに対し。c-kitとCD5は胸腺癌にほぼ特異的であり、肺扁平上皮癌には発現しないことも確認された。以上より、胸腺皮質環境細胞の有無、胸腺プロテアソームβ5t、c-kitおよびCD5発現の有無を検討する診断に至るフローチャートを提案した(Journal of Clinical and Experimental Hematology, 2013 in press)他方、AB型胸腺腫はA領域の違いにより2種類に細分類しうることが判明した。19例のAB型胸腺腫のA領域を検討すると、5例はA型胸腺腫とほぼ同じ、サイトケラチン(CK)陽性、ビメンチン(BM)陰性、EMA陰性のフェノタイプを示す通常型、14例はmetaplastic thymomaでみられるCK陰性、BM陽性、EMA陽性の線維芽細胞様上皮である事が判明し、これを化生型とした。
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