研究概要 |
本研究課題の研究助成決定が平成22年度後期となったため、研究始時期が6ヶ月程度遅延した。平成22年度の研究計画で予定していたマクロゲン社のアレイCGHターゲットスライドを用いた肺癌のアレイCGH解析を施行した。方法は、当初研究計画で記載した方法に沿って行なった。すなわち、(1)検体DNAを蛍光色素Cy5、正常ヒトリンパ球DNAをCy3で標識の後、両者をブロッキングDNAと等量混合しCGHプロープを作成、(2)このCGHプローブをアレイCGHターゲットスライドにハイブリダイズし、3日間静置、(3)ターゲットスライドを洗浄後、レーザースキャナーで蛍光画像の取り込み、(4)解析ソフトウエアで解析、であった。過去に蓄積にある肺癌DNA検体分については、約20例程度についてCGH解析を完了したが、今後とも症例解析の継続が必要である。アレイCGH法は検体癌ゲノムDNAの増加、減少、欠失等の異常を、ターゲットスライド上に貼付するターゲットDNAに対応する全てのゲノムDNA領域について、一回の検査で網羅的に解析する事が可能となるハイスループット分子遺伝学的解析技術である。癌はさまざまなレベルのゲノム異常の蓄積の結果として発生する事が指摘されている。アレイCGH法は主に染色体不安定性といわれる比較的規模の大きなゲノムDNAの量的異常を検出するのに有用な技術である。癌ゲノムDNAの増幅領域には癌の発生進展に関与する癌遺伝子が、また、欠失領域には癌の発生進展に抑制的に作用する癌抑制遺伝子が存在する可能性が高い。このような新規癌関連遺伝子の検出のみならず、特定の癌関連染色体ゲノム異常から、癌の臨床病理学的特性とリンクする異常を抽出し、癌の病態を把握するためのバイオマーカーとして使用する等の利用法も考えられる。われわれの用いる方法の妥当性および信頼性については、既に論文発表を済ませている(Chochi Y, et al.I Pathol 2008)。今年度以降開始予定であるサンプルDNAの遺伝子プロモーターメチル化を網羅的に解析するメチル化アレイ法との併用で、肺癌の発生進展機構へのより詳細な解析、臨床応用が期待される。
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