【はじめに】腸上皮化生腺管の分子病理学的意義を明らかにするために、分離癌腺管および分離腸上皮化生腺管のLOH及びDNAメチル化解析を行った。 【対象と方法】分化型胃癌60例を対象とし、癌組織及び背景粘膜より癌腺管及び非腫瘍性腺管を分離した。非腫瘍腺管はアルシアンブルー染色およびMUC5AC、CD10免疫染色を行い、完全型腸上皮化生腺管 (CIM)、不完全型腸上皮化生腺管 (ICIM) 及び非腸上皮化生腺管 (NIM)に分別した。DNAを抽出後、分子解析はLOH(1p、3p、5q、8p、13q、17p、18q、22q)及びメチル化 (LOX、MINT31、RUNX3、ELOM1、NEUROG1、THBD、SOSC1)解析を行った。メチル化については高、中等度、低に分類した。 【結果】癌腺管では各染色低領域で高いLOH頻度を示したが、CIM、ICIM及びNIMではLOH頻度は低かった。癌において高メチル化を示した腺管は18.3%にみられたが、CIM、ICIM及びNIMでは認められなかった。中等度メチル化は癌腺管では31.8%でみられたが、CIM、NCIM、NIMでは低頻度であった。低メチル化は癌腺管の約半数にみられたが、NCIM、CIM、NIMの多くが低メチル化を示した。 【結語】腸上皮化生腺管は分子レベルでも安定した状態であり、前癌病変とすることは困難と考えられた。
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