本研究は、前立腺癌治療標的分子の探索、とくにホルモン非感受性前立腺癌細胞に対する新しい治療戦略の可能性を探索することを目的とする。具体的には、長期間のホルモン療法後ホルモン不応性となり再発・転移した前立腺癌を対象として、ソマトスタチンレセプター(SSTR)を標的とする新たな分子標的治療法開発のための基礎的検討を行う。 我々は、これまで前立腺癌のホルモン治療によって癌の細胞生物的特性が変化することに着目し研究を続けてきた。長期間ホルモン療法を施行した前立腺癌症例では、ホルモン非感受性癌細胞のみが残存し最終的には治療抵抗性となることから、現在、ホルモン非感受性癌細胞に対する新しい治療戦略が必要とされている。 我々は、ホルモン治療後、ホルモン非感受性となった前立腺癌症例のうち約半数(52%)においてSSTR2が発現するようになることを初めて明らかにした。この研究成果をもとに、新たに発現したSSTRを標的としたホルモン非感受性前立腺癌の分子標的治療を試みる点が、本研究の第一の特色である。また、ホルモン治療後、SSTR陽性とならなかったホルモン非感受性前立腺癌については、DNAメチル化阻害剤、脱アセチル化抑制剤などによりSSTRの発現を誘導し、その後、この人為的に発現させたSSTR分子を標的として治療を行う、2段階分子標的治療法を提案する点が本研究の学術的な特色・独創的な点である。また、ソマトスタチンアナログ製剤が前立腺癌増殖抑制・転移抑制に有効であることを証明できれば、ホルモン非感受性前立腺癌治療の新しい治療法の開発にもつながると期待される。
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