研究概要 |
心筋架橋(MB)の解剖学的特性の定量的組織計測. 既に蒐集済みの、非梗塞心のうち、左冠状動脈前下行枝(LAD)にMBを有する200例、MBを有しない200例を対照群として、今回、MBの有無を問わず、150例の梗塞心を蒐集した。これらの剖検心を中性緩衝ホルマリン固定し、LADを周囲の心外膜脂肪織・MB部の心筋を含めて、左冠状動脈入口部より、5mm間隔に横断面で、割を入れ、平均20断面について、HE・EVG染色を施し組織標本を作製した。観察対象として、心筋梗塞の有無とならんで、MBの解剖学的特性の計測と画像解析によるLAD各断面の動脈硬化度を測定した。又、検索可能な症例については、eNOS(eNOS), endothelin-1(ET1), angiotensin converting enzyme(ACE)に関する免疫組織化学の観察を行った。 (結果)1.心筋梗塞を生じていた200例の群をMBの有無により、2つに分けて発生年齢を検討したところ、MBを有していた群の平均年齢は、MBを持たない群に比して、有意差をもって7歳若かった。なお、両群の間で高血圧・高脂血症の負荷率に差はなかった。2.MBを有した心筋梗塞群において、MBの長さ・厚さは、MBをもつ非梗塞心に比して、有意に長く、又、厚かった。3.MBを有した心筋梗塞群において、LAD内の硬化病変の好発部位は、MBを有しない心筋梗塞群のそれに比して、左冠状動脈入口部方向に、2cm変位して局在していた。4.eNOS、ET-1, ACEのいずれの動脈収縮に関連した蛋白の発現も、MB被覆部のLAD内膜では、MB近位内膜に比して有意に低下していたことが判明し、これらが、管の収縮・弛緩を介して、アテローム硬化抑制と関連していることが想定された。
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