研究課題/領域番号 |
22590323
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
上田 善道 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50271375)
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研究分担者 |
土屋 弘行 金沢大学, 医学部, 教授 (40227434)
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キーワード | Aquaporin 1 / Aquaporin 5 / 骨肉腫 / 細胞移動能 / 浸潤能 / 偽細胞突起 / HT1080 / トランスフェクション |
研究概要 |
ヒト骨肉腫におけるアクアボリンaquaporin(AQP)の発現と骨原発ヒト線維肉腫細胞株(HT1080)を用いたAQP1の細胞移動能・浸潤能への機能解析を行ない、以下の結果を得た。 1. 非腫瘍性ヒト骨・軟骨組織では、AQP1の骨芽細胞と幼若な軟骨細胞の細胞膜での、AQP5の一部の破骨細胞の細胞膜での発現を認めた。 2. ヒト骨肉腫腫瘍生検組織では、AQP1は23/26例(88%)で腫瘍細胞の細胞膜あるいは細胞質に、AQP5は17/26例(65%)で細胞質に強発現を認めた。AQP1は骨形成性と軟骨形成性骨肉腫細胞の細胞膜に限局する発現パターンと細胞質内・偽細胞突起での発現亢進パターンの2種類が識別され、後者は生命予後不良と有意な関連を示した(p=0.004)。 3. 腫瘍摘出組織11/18例(61%)では浸潤先進部に一致したAQP1の細胞質内・細胞偽突起内での発現亢進を認め、生命予後不良と有意な関連を示した(p=0.013)。 4. 骨肉腫細胞におけるAQP1、5の発現は、骨肉腫腫瘍組織とヒト骨肉腫細胞株4株におけるwestern blotおよびreal time RT-PCR解析で確認された。 5. HT1080はAQP1をほとんど産生しない。トランスフェクションによるAQP1遺伝子の強制発現により偽細胞突起形成促進と同部細胞膜・細胞質へのAQP1発現局在に加え、細胞移動と浸潤能元進がscratch assayとmatrigel invasion assayにより確認された。 以上の結果から、ヒト骨肉腫では、1)骨芽細胞・軟骨芽細胞の分化に対応したAQP1の細胞膜限局在性発現、2)腫瘍発生に伴うAQP5のabberantな発現、3)腫瘍進展に関連するAQP1の発現亢進の存在が初めて明らかになった。さらに、AQP1の過剰発現は、偽細胞突起形成を促進し、骨肉腫細胞の浸潤性と転移能の亢進に関与することが明らかになった。
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