研究概要 |
1.NCX1の免疫組織化学染色に関する基礎的検討:大動脈中膜のパラフィン標本でのNCX1発現の可能性を検討する目的で、大動脈解離症例を用いて種々の抗原賦活法について検討した。抗原賦活法はPronase, Microwave処理およびCan Get Signal処理法を用いた。未処理標本では一部の中膜平滑筋細胞がNCX1弱陽性を示したが、間質の非細胞組織も非特異的に染色された。PronaseおよびMicrowave処理では平滑筋細胞のNCX1発現はむしろ低下し、ほとんどの細胞が陰性化した。一方、Can Get Signal処理法では中膜平滑筋細胞がNCX1陽性を示し、背景の間質組織成分の染色性が減弱した。このことから、NCX1のパラフィン標本での抗原賦活法としてはCan Get Signal処理法が最適であることが判明したので、以後の免疫染色ではCan Get Signal処理法を用いることとした。2.大動脈解離中膜におけるNCX1の免疫組織化学的検討:急性大動脈解離(5例)と粥状硬化性大動脈瘤(5例)との間で中膜平滑筋細胞のNCX1発現を免疫組織化学的に比較検討した。急性大動脈解離症例は解離部と非解離部に分けて検索した。20倍視野当りのNCX1陽性細胞の出現率は、急性大動脈解離症例の解離部:22.2±8.31%、非解離部:27.6±4.82%、粥状硬化大動脈瘤症例:24.0±9.56%であり、これらの間に有意差は見られなかった。しかし、嚢状中膜壊死部とその周囲の変性細胞はNCX1陰性であった。以上から、大動脈中膜平滑筋細胞にはNCX1が発現し、嚢状中膜壊死部の変性細胞でその発現が消失することが明らかになった。
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