研究概要 |
IgA腎症組織分類(国際分類と日本分類)は、いずれも腎機能予後不良を予測する病理パラメータから成立しているが、そのエヴィデンスを出すためのコホートや統計的手法が異なるため、異なった組織分類となっている。そこで、それぞれの分類を同じコホートで検証し、統一した組織分類をめざして改良することを目的とした。厚労省科研IgA腎症分科会に登録された成人IgA腎症の118症例を用いた。日本分類の組織学的重症度分類grade I-IV(急性病変A,慢性病変C,A/C)、そして、国際分類におけるMEST(M;メサンギウム細胞増多、E;管内性細胞増多、S;分節状硬化・癒着、T;間質線維化・尿細管萎縮)スコアにて各症例を分類し、それぞれの分類の各群間での臨床データの識別能力について統計的に検証した。臨床データとして、腎生検時のeGFR、eGFRの傾き(6~48ヶ月間)、1日蛋白尿を用いた。その結果、日本分類のgradeはeGFRと1日蛋白尿で群間に有意差を認めたが、eGFRの傾きでは有意差がなかった。また、日本分類の急性病変はeGFRの傾きと1日蛋白尿で有意差を認めた。一方、Oxford国際分類のMESTでは、1日蛋白尿においてすべての病変で有意差を認めたが、eGFRにおいてはMとTのみしか有意差がなかった。eGFRの傾きは、すべての病変の群間で有意差を認めなかった。以上、日本分類のgradeとOxford分類のMTは、腎生検時腎機能と蛋白尿の指標となったが、6~48ヶ月間のeGFRの傾きでは群間の有意差を認めなかった。日本分類の急性病変に限るとeGFRの傾きで有意差が認められた。以上の結果から、日本分類にはMETの評価がないため、腎機能ならびに蛋白尿予後の臨床的観点から、lumped systemの日本分類とsplitsystemの国際分類の両者を併記する必要が示唆された。
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