研究概要 |
IgA腎症の組織分類に関して、Oxford国際分類と我が国の組織学的重症度分類(日本分類)が異なる分類となった。これらの2つの基準による混乱をさけるため、それぞれの分類を異なったコホートで検証し、改良することを目的とした。Oxford国際分類により、IgA腎症に関する必須の病理パラメータとして、メサンギウム細胞増多(M)、管内性細胞増多(En)、管外性細胞増殖(活動性半月体)(Ex)、全節性硬化(G)、分節性硬化・硝子化+癒着(S+AD)、間質内炎症(TI)、尿細管萎縮・線維化(TF)、小動脈硬化(AS)、細動脈硝子化(AH)が選択された。Oxford国際分類と日本分類は腎機能予後に関与する病理因子を基準に、前者はM、En、S、TFを選択しsplit systemにより、後者はG,S,Exを選択しlumped systemにより成立している。そこで、我が国のコホートでOxford国際分類の追試研究をおこなった結果、S,Ex,TFが採択され、MとEnは採択されなかった。その原因として、コホートの腎生検時一日蛋白尿と腎機能による制限(inclusion criteria)の違いが挙げられた。この追試研究による評価では、inclusion criteriaを同じくしないコホートにおいてOxford国際分類が適応されなかった。さらに、MとSの組み合わせや動脈病変(AS,AH)が腎機能予後不良を加速させたため、各病変を組み合わせによるlumped systemに進展させる余地があった。以上、Oxford組織分類の改良にはExの追加が必須であった。エヴィデンスに基づく組織分類作成の手法は、コホートの相同性を要求し、普遍化出来ないという限界を持つことがわかった。そのため、組織分類はG,S+AD,M,En,Ex,TI,TF,AS,AHをスコアー化し公平な病態把握に使用されるべきであった。
|