研究課題/領域番号 |
22590331
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
梅津 哉 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (50251799)
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研究分担者 |
内藤 眞 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30045786)
長谷川 剛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90251800)
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キーワード | HNF-4α / P1 isoform / P2 isoform / 肝癌 / 肺癌 |
研究概要 |
HNF-4α (hepatocyte nucler factor-4α)は核内受容体の一つで、内胚葉形成や肝細胞の分化に重要な転写因子である。両者を識別できる抗体を用いて昨年は肺癌におけるHNF4αアイソフォームの発現を検討した。本年度はヒト肝細胞癌におけるHNF-4αアイソフォームの発現を免疫組織学的に検討し、臨床病理学的因子と比較した。 外科的に切除された肝細胞癌54例について、抗HNF4α抗体(P1,P2)を用いて免疫染色を行い、P2陽性率と組織学的分化度、門脈侵襲、肝内転移、TNM分類について比較検討し、統計解析を行った。また予後についても経過追跡を行い、生存解析を行った。 ヒト肝細胞癌54例(高分化型15例、中分化型30例、低分化型9例)について免疫染色を行ったところ、全例P1陽性であったため、P2陽性率と組織学的分化度、門脈侵襲、肝内転移、TNM分類について比較検討した。その結果、P2の発現は分化度が低いほど高率になる傾向がみられた(高分化型27%、中分化型50%、低分化型100%)。門脈侵襲のある症例のP2陽性率(90%)は、門脈侵襲のない症例(43%)に比較して有意に高かった。またTNM stage III/IV症例のP2陽性率(73%)は、TNM stage I/II症例(38%)に比較して有意に高かった。生存率についてはP2陽性群とP2陰性群の間で有意差は認められなかったが、切除2年後の無再発生存率はP2陽性群がP2陰性群に比して有意に低かった。 以上、本年度の研究によって、肝細胞癌では組織学的分化度の低下に伴ってP2の発現率が上昇すること、さらにP2の発現が門脈侵襲やTNM分類にも関係するため術後早期の再発を推測する有用な指標となりうることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は肺癌におけるHNF4αアイソフォームの発現を検討し、粘液産生タイプの腺癌に高発現すること、また、このタイプには肺癌に特異的とされるTTF-1の発現が欠如することを示し、HNF4αと粘液形質との関連を明らかにした。今年度は肝癌のHNF4αアイソフォームの発現と臨床病理学的諸因子との関連を見出した。HNF4αと癌との関係に関するこれらの成果は臨床病理学的に有用であり、研究は順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
HNF4αに関する癌の研究はP1,P2アイソフォームを識別できる抗体を用いることで、大きく発展している。HNF4αは内胚葉形成や肝細胞の分化に重要な転写因子であり、消化管、肝、腎組織に発現し、癌においても特徴的な発現をみせる。本研究では肺癌、肝癌について組織型や臨床因子との関連を明らかにしており、これから胃癌についても検討予定である。今後は肺癌で明らかになったように、他の遺伝子との関連、相互作用などの理解を深める研究が重要と思われる。
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