研究概要 |
HNF-4α (hepatocyte nucler factor-4α) は核内受容体の一つで、内胚葉形成や肝細胞の分化に重要な転写因子である。われわれは2種類のHNF-4αアイソフォーム(P1, P2)を識別できる3種類の抗体(P1を特異的に認識、P2特異的に認識、P1+P2のいずれをも認識)を用いて昨年度はヒト肝細胞癌におけるHNF-4αアイソフォームの発現を免疫組織学的に検討して臨床病理学的因子と比較し, 肝細胞癌では組織学的分化度の低下に伴ってP2の発現率が上昇すること、さらにP2の発現が門脈侵襲やTNM分類にも関係するため術後早期の再発を推測する有用な指標となりうることを示した。 以前にわれわれは胃がんにおけるHNF-4αアイソフォームの発現を免疫組織学的に検討し、粘液形質による分類との比較を行ったが、今年度はEBV (Epstein-Barr Virus) 関連胃癌におけるHNF-4αの発現を検討した。EBER-1 in situ hybridizationで腫瘍細胞核内に陽性を示した胃癌18例 (172例中10.5%) を対象とした。Human Gastric Mucin、MUC5AC、MUC6、MUC2、CD10を粘液形質の判定に用い、HNF-4αの発現と比較した。その結果、早期胃癌10例の検討では、胃型4/10、胃腸型0/10、分類不能型6/10、P1陰性10/10、P2陽性10/10であり、進行胃癌8例では、胃型4/8、胃腸型1/8、腸型0/8、分類不能型3/8、P1陰性5/8、P2陽性8/8であった。以上の結果から、EBV関連、ことに早期胃がんは分類不能型、胃型の粘液形質を呈し、P1陰性であることから、EBV関連胃癌の発生墓地とHNF-4αアイソフォームとの関連が示唆された。
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