本研究の目的は、肝移植後家族性アミロイドポリニューパチー(FAP)患者における組織沈着アミロイド融解機序を明らかにすることである。我々は過去に、肝移植後FAP患者の腹壁脂肪吸引生検を経時的に繰り返し、沈着アミロイドが減少することを報告した。今回の研究では、その事象が、他臓器でもおこるのかどうか、融解の機序の解明を主題としている。本年度はまず14名の肝移植後FAP患者の胃十二指腸生検組織を採取し、アミロイド沈着量の半定量、野生型・変異型トランスサイレチン(TTR)のアミロイド線維構成比を検索した。このうち4名では、肝移植前後で検体を採取できたため、沈着量の推移とアミロイド構成比について比較検討した。この4名の胃粘膜アミロイドの検索では、移植後5年以内の生検のためか、沈着量は1名で増加、2名で不変、1名で減少と一定しなかった。しかしながら全例で、野生型TTRの比率は上昇していた。ほか肝移植後のみ生検を施行した10名の患者では、移植後経年数にほぼ比例して、野生型TTrRの比率が上昇していた。以上の結果を考察すると、肝移植後も沈着アミロイドは、野生型TTRの沈着と、変異型TTRと野生型TTRの両者の融解が常に繰り返され(amyloid turn-over)、アミロイドが減少していく、いわゆるamyloid regressionがFAPの脂肪組織以外でも起こりうることを示している。現在、移植後のみ生検を施行した10名の患者のアミロイド沈着量の半定量を施行中であることと、移植前後で生検しえた患者については、5年以降の生検を検討し、アミロイド沈着量の推移を更に確認する予定である。今後は、組織側のアミロイド融解のプロセスの機序の解明を行う予定。
|