本年度も引き続き16種類の腫瘍由来培養細胞を用いてセルアレイを作成し、病理診断で検索されることの多い腫瘍マーカーおよびがん関連遺伝子産物について蛍光免疫染色を行い、それらの発現量をレーザースキャニングサイトメーターで測定した。使用した腫瘍細胞は肺がん由来のもの4種類、がん由来、乳がん由来のもの2種類、卵巣がん、腎細胞がん、十二指腸がん、肝芽腫、口腔扁平上皮癌、子宮体がん、副腎皮質腺がん、軟骨肉腫由来のものそれぞれ1種類である。1枚のセルアレイには8種類の腫瘍由来培養細胞と子宮頸がん由来培養細胞であるHeLaS3細胞および正常細胞としてヒト胎児線維芽細胞由来TIG-7細胞の計10種類の細胞をそれぞれ5スポットずつスポットした。したがって今年度も2セットのセルアレイを作成した。 蛍光免疫染色では病理診断で使用する腫瘍マーカー(サイトケラチン、CD抗原、神経系マーカー、筋原性マーカーなど)やがん遺伝子やがん抑制遺伝子産物、細胞周期に関連するタンパク質(サイクリンなど)をターゲットとした。 免疫染色を行ったセルアレイスライドグラスはレーザースキャニングサイトメーターで目的とするタンパク質の発現量を蛍光強度を指標に測定した。セルアレイシステムでは同一セルアレイスライドに張り付けてある10種類の細胞について、同時に蛍光量を測定することが可能であり、1枚1枚個別に免疫染色を行い、計測する場合と比較して短時間で多くのデータを得ることができた。 得られたデータについて解析をし、その結果から腫瘍細胞を分類することを試みたが、データのばらつきもありクリアに分類することができなかった。今後はさらにデータ数を増やして検討を続ける予定であるが、多数データの扱いについてはやはり専門家の知見が必要であり、バイオインフォマティクス専門家と共同して研究を進めていく予定である。
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