研究課題
前年度の研究で、第8番染色体短腕(8p)上に存在する膵癌進展に関わる癌抑制遺伝子候補として9個の遺伝子が抽出された。今年度はそれら9個の遺伝子が膵癌細胞で癌抑制遺伝子として機能しているかを調べた。まず9個の遺伝子を膵癌細胞株で強制発現させるために、それぞれの遺伝子を導入したレンチウイルスを作製した。各々のウイルスを感染した細胞で目的の遺伝子産物が産生されていることを確認後、以下の項目について検討した。1.増殖能8pの欠失により9個すべての候補遺伝子の発現が低下している膵癌細胞株に、9種類のレンチウイルスをそれぞれ感染させて一過性に遺伝子発現を回復させ、増殖能への影響をみた。9個の候補遺伝子のうち3個の遺伝子において、発現回復により細胞増殖は有意に抑制された。同様の結果は、8pが欠失しているその他の膵癌細胞株でも確認された。2.アポトーシス誘導能増殖抑制能を有する3遺伝子について増殖抑制の機序としてアポトーシス誘導が関わっているかを調べた。いずれの遺伝子もその発現回復にて膵癌細胞にアポトーシスを誘導しなかった。3.網羅的発現解析増殖抑制のメカニズムを明らかにするために、マイクロアレイを用いて発現回復したウイルス感染細胞における遺伝子発現の変動を網羅的に解析した。増殖に関わる既知の遺伝子とともに新規の遺伝子が抽出された。以上のpreliminaryな知見はこれから詳細に検証する必要があるが、膵癌の進展に関わる分子メカニズムが明らかになり標的分子が同定されると、予後不良な膵癌の「早期遺伝子診断」と呼ぶべき新しい診断法と、新規分子標的治療法が実現することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、膵癌の進展に関わる候補遺伝子のレンチウイルスを作製することができ、それを用いて機能解析の一部を施行することができたから。
来年度以降は、今年度明らかにした増殖シグナルに関わる分子が実際に治療や診断の標的となりうるか否かについて、動物モデルを用いてさらに検証していきたい。また、増殖以外の癌形質である遊走能や浸潤能、転移能などに関する機能解析も進めていきたい。
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