研究課題
これまでの研究より、膵癌の進展には第8番染色体短腕(8p)の欠失が重要であることが分かった。さらに8p上に存在する癌抑制遺伝子候補として3個の遺伝子が抽出された。今年度は、それらのうち最も増殖抑制能が顕著であった遺伝子Xに注目して、以下の項目について検討した。<1.増殖抑制の機序の解明> 8p欠失により遺伝子Xの発現が低下している膵癌細胞株に、遺伝子Xを発現するレンチウイルスを感染させて一過性に発現を回復させ、細胞周期への影響をみた。遺伝子Xの発現回復により、膵癌細胞はG1期に止まる細胞が増えたことから、G1期停止によって細胞増殖が抑制されることが分かった。<2.シグナルパスウェイの解明> 一過性に遺伝子X発現を回復させた細胞で、どのような遺伝子の発現変動が生じているのかを、網羅的発現解析により調べた。その結果、G1期の細胞増殖停止に関わる遺伝子およびその関連遺伝子の発現が変動していることが分かった。現在、リン酸化タンパクアレイを用いて、タンパク活性化のパスウェイを半網羅的に解析しているところである。<3.ノックアウトマウスの作製> 今回同定した遺伝子が、膵癌の癌抑制遺伝子として機能することを遺伝学的に証明するためにノックアウトマウスの作製を試みている。既に膵癌を自然発症するモデルとして活性化型変異Kras遺伝子を膵臓特異的に発現するマウスが知られている。このマウスにおいて、同定した増殖抑制遺伝子を欠失させると、膵癌の発生・進展が亢進することが予想される。現在、ターゲティングジーンを作製し、ES細胞の樹立を進めているところである。本研究で得られた以上の知見はこれからさらに詳細に検証する必要がある。膵癌の進展に関わる分子メカニズムが明らかになり標的分子が同定されると、予後不良な膵癌の「早期遺伝子診断」と呼ぶべき新しい診断法と、新規分子標的治療法が実現することが期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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