研究概要 |
大腸菌でDNAの組換えに関わると考えられているdbpA(DNA-binding protein A)の発現が、ヒトにおいて活性化リンパ球の指標となるCD30陽性細胞の染色態度とリンパ組織において類似していることを見出し、さらにCD30陽性の悪性リンパ腫に高頻度に発現していることを見出した。 前年度樹立した、Hodgkinリンパ腫細胞株L428にdbpAと空ベクターを導入したL428-Flag-dbpA、L428-Mockを用いて、Affymetrix社のHuman Gene 1.0 ST Arrayを用いた遺伝子発現の網羅的解析を行った。その結果、L428-Flag-dbpAで高い発現のみられた遺伝子としてIL13,4E-BP1,eEF1などがあり、また発現の低い遺伝子としてSTAT4,CD23,CD45,P-REX1,DOCK5などであった。L13は好酸球の遊走因子であり、Hodgkinリンパ腫の腫瘍組織微小環境における好酸球浸潤との関わりが示唆された。またdbpAはZO-1の結合因子として単離された側面から、ZONABとも称され、細胞接着としての機能も報告されている。P-REX1,DOCK5はいずれもRacGEFであり、dbpAがこうした因子を通じて、Racの活性化を行い、細胞骨格系の制御などに関わることが示唆された。 前年度作製した、マウスBリンパ球特異的遺伝子であるμ遺伝子のプロモーターの下流にヒトdbpAのcDNAを接続した導入遺伝子をもつトランスジェニックマウスのファウンダーを得、その中からさらに導入遺伝子が伝達したF1を樹立した。そのF1の脾臓ならびにリンパ節を採取し、ウェスタンブロットにて導入遺伝子の発現確認を行った。遺伝子型に一致して導入遺伝子の発現を、抗ヒトdbpA抗体を用いて確認した。今後は長期観察にてその表現型の観察を行う。
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