大腸菌でDNAの組換えに関わると考えられているdbpA (DNA-binding protein A)の発現が、ヒトにおいて活性化リンパ球の指標となるCD30陽性細胞の染色態度とリンパ組織において類似していることを見出し、さらにCD30陽性の悪性リンパ腫に高頻度に発現していることを見出した。上記の結果を踏まえ、dbpAの機能を正常のリンパ球ならびに悪性リンパ腫において解析した。 Hodgkinリンパ腫細胞株のひとつであるL428にはdbpAの発現はみられない。そこでFlag-dbpAと同時にGFPをそれぞれ独立に発現するプラスミドを構築し、dbpA発現安定細胞株を樹立した。この細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った結果、PI3K-Aktシグナル伝達経路の活性化を示唆する結果を得た。一方、Hodgkinリンパ腫ではNFkBの恒常的活性化が特徴の一つとして挙げられるが、dbpAのHodgkinリンパ腫での高発現との関連に関し、dbpAのプロモーター領域の解析を行ったところ、DNA配列上、cRelの結合部位が複数同定された。転写開始点から2500bpまでの種々の配列をクローニングし、ルシフェラーゼアッセイを行った。その結果、cRelを発現させた細胞ではMockに比べて、転写活性が有意に高いことが観察された。このことはNFkBシグナル伝達系の下流にdbpAが位置することが示唆された。 またヒトdbpA遺伝子のcDNAをLckプロモーターの下流につないだトランスジェニックマウスを作製し、そのF1より脾臓ならびにリンパ球を抽出し、ウェスタンブロットにて導入遺伝子(Tg)のタンパクレベルでの発現を確認した。長期観察群において表現型の観察を行っているが、現在1年齢において有意な差はみられない。1.5年齢をめどに種々の臓器の形態ならびに遺伝子発現等を観察する予定である。
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