研究概要 |
本年度は以下の実績を得た. 1. 食道原発扁平上皮癌(進行癌,早期癌)20例を対象に,ホルマリン固定パラフィン包埋病理組織切片を用いて,miR-199a-5p,-3p(以下5p,3p)のin situ hybridization(ISH)法および連続切片におけるEgr1,Brmの免疫染色を行い比較検討した. 2. 解析可能であった10例で,非腫瘍部粘膜上皮では,5pおよび3pはともに基底層部より一段上の細胞群で発現が高かったが,癌浸潤部ではともに発現が低下していた. 3. BrmとEgr1の免疫染色では,非腫瘍部粘膜上皮においてBrmは基底層部から表層部まで幅広く染まったが,Egr1は中間層が染まる発現様式を示した.一方,癌浸潤部においてはBrmの発現は高く,Egr1の発現は非腫瘍部粘膜上皮に比べ低下していた. 4. 以上まとめると,食道扁平上皮癌において,miR-199a-5p, miR-199a-3p, Egr1の発現は低下し,Brmは強く発現していた.この傾向は食道癌細胞株を用いたこれまでの解析結果と一致していた.これら一連の遺伝子制御回路が,癌の発育,進展過程に関与する可能性が示唆されたが,今回の検討では癌の進行度との明らかな相関は認められなかった. 5. 卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌,粘液性嚢胞腺癌,明細胞腺癌)5例ならびに肝細胞癌2例を対象に,5p,3pに対するISH法を施行したが全例陰性であった.プローブ劣化の可能性を含めて再検討中である.
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