当研究はこの一般的ながん-間質相互作用に加え、がん細胞に特異的な解糖系の代謝変動増進として従前より知られるワールブルグ効果の結果として腫瘍組織周辺で起こる代謝低分子産物の濃度変化が、間質細胞を活性化し、そしてそれらががん細胞との更なる相互作用を起こすことでフィードバック的に再びがん細胞自らに影響を及ぼすという新たな知見を確認・解析する事を目的としている。 昨年度は乳酸・ピルビン酸などの一価カルボン酸濃度の上昇に特異的な発現変動を示す遺伝子群の網羅的探索・抽出を目指すことを目標に、乳酸/ピルビン酸などの一価カルボン酸を培養液に添加した標品と培養液だけの標品/これらの一価カルボン酸のイオン体試薬(乳酸ナトリウムやピルビン酸ナトリウム)を添加したもの/同程度の濃度・pHまで無機酸を加えた標品の遺伝子の網羅的発現変動をDNAチップ実験により比較した。 DNAチップ実験自体は良好に推移したので、この結果にバイオインフォマティックス手法を加味すれば、ワールブルグ効果がもたらす遺伝子変動を十分解析可能と考えていた。しかし共培養系由来サンプルの発現が研究開始前の推定より複雑で、細胞混在比率を推定しての発現解析に困難が招じ、現時点では精度の高い結果を得づらい展開となっている。 今年度はさらに2種のアプローチを行なう事により、遺伝子の網羅的発現変動解析をより緻密に行なう事を考えている。
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