研究課題/領域番号 |
22590342
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
藤井 元 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (90321877)
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キーワード | がん間質相互作用 / ワールブルグ効果 / 遺伝子発現 / 乳酸 / ピルビン酸 / ラミニン5 / 共培養 |
研究概要 |
当研究は、がん細胞に特異的に観察される解糖系代謝上昇として従前より知られているワールブルグ効果により、腫瘍組織周辺で乳酸などの一価カルボン酸を始めとする代謝低分子産物の濃度上昇が起こり、その濃度変化が間質細胞を刺激・活性化すること、そしてその結果として再びがん・間質相互作用を通じて間質細胞がフィードバック的にがん細胞に影響を及ぼすという新たな知見を確認・解析する事を目的としている。腫瘍細胞・間質細胞の共培養系下で、乳酸・ピルビン酸などの一価カルボン酸添加時に特異的な発現変動を示す遺伝子群の網羅的リスト作成を本研究の主目的としているが、平成22年度はDNAチップ実験自体は良好に推移したものの、細胞混在比率を推定しての発現解析に困難があり、精度の高い結果を得られなかった。 そこで平成23年度は2種以上の発現混在系での発現データに、バイオインフォマティックス的な手法を利用しての推測・解析操作を行なう事により、個々の発現を独立的に推定可能とした。 この結果、腫瘍細胞/間質細胞の共培養系下、さらに周辺微小環境でのワールブルグ効果代謝低分子産物濃度が高い時にこの共培養系下で、発現が変動する候補遺伝子を複数確認する事が出来た。 更にこれらの遺伝子群が培養環境下で実際そのような発現変動を示すかについて、定量的RT-PCRや、in situ hybridization、さらには抗体を使用したWestern Blottingや免疫組織化学で確認を行なった。今回発現変動標的として選んだ遺伝子群は実際の腫瘍、特に腫瘍細胞が間質と共存している浸潤先進部などで重要な機能を果たしている可能性が高い為、発現変動を誘引するシグナル機構の解析と共に、個々の遺伝子の機能解析も意義深いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAチップを利用した遺伝子発現の定量的な解析から、共培養における腫瘍細胞と間質細胞の細胞混在比率推定を行なえる目処が立ち、比較的精度の高い発現解析を行なう事が可能となったと考えられるため
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降も基本的に当初の研究計画に基づき、研究を推進していく予定である。 当初予定したインフォマティックスを利用した解析がようやく軌道に乗り、解析が推移し始めたため、研究目的の1つであるくがん間質相互作用によって発現が特異的に変動する遺伝子の抽出法開発>はどうにかクリア出来る見込みである。そこで今後はこの手法を利用した変動遺伝子の網羅的なリスト作成に向けて、鋭意実験を積み重ねていく予定である。
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