研究概要 |
我々が独自に開発したQ-FISH(quantitative fluorescent in situ hybridization)法は組織中の細胞ごとにテロメア長を計測することができ、再現性があります。これまで本法を用いた口腔粘膜、食道、皮膚のテロメア解析から上皮内癌例では正常上皮と比較して、発生母地の段階から既に過度のテロメア短縮があり、染色体の不安定性が存在することを証明してきました。次の段階として、過度のテロメア短縮を引き起こす原因究明を行う目的で、食道癌の好発に関連するアセトアルデヒド脱水酵素(ALDH)1Bおよびアルコール脱水素酵素2型遺伝子の遺伝子型によりテロメア長の差の有無を検討します。 Q-FISH法を用いて生検組織のテロメア解析を行い、癌の好発する遺伝子型とテロメア長との関係を明らかにし、さらに染色体不安定性の形態学的指標であるanaphase bridgeを計測することにより染色体不安定性との関係についても解析します。 今年度は独立行政法人国立病院機構久里浜アルコールセンターから提供を受けたALDH遺伝子型検索済みのアルコール症患者から採取された食道生検組織と当センター病院病理部の剖検高齢者正常食道組織で組織FISHを行いました。その結果、アルコール症患者では非癌部の上皮でも正常に比べてテロメアが短縮していることを明らかにしました。(J Pathol, 223:410-6,2011)
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