研究課題/領域番号 |
22590344
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター |
研究代表者 |
伊東 正博 独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター, 部長 (30184691)
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研究分担者 |
中島 正洋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50284683)
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キーワード | チェルノブイリ / 放射線 / 小児甲状腺がん / 遺伝子不安定 / ret/PTC / 53BP1 / microRNA |
研究概要 |
本研究では胎内・乳幼児・若年被曝による放射線誘発甲状腺がんの高リスク分子機構を、既に確立したゲノムDNA変異解析に加えエピジェネティックな変異解析の両面から解明することを目的とする。チェルノブイリ事故から26年が経過し周辺地域での甲状腺癌の発生は小児から成人にシフトし依然高い発生率が見られる。チェルノブイリ組織バンクには平成23年度は326症例のデータと生体試料の登録が追加され、これまでに3,861例の組織登録が完了している。国内では原爆被爆関連甲状腺がん症例(原爆被爆者腫瘍組織バンク)の登録が進んでいる。 事故後26年が過ぎ遺伝的・環境的に同じ地域の非被曝小児症例(自然発症甲状腺癌症例)のデータ・生体試料が集積し真の対照症例と比較が可能になってきた。形態学的には被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈することを報告した。充実性成分は被曝時年齢よりも短い潜伏期と関連しRET/PTC3変異が高率に観察された。高分化型形態を呈する乳頭癌ではRET/PTC1変異が優位であった。短い潜伏期ほど浸潤性が高く、長い潜伏期ほど腫瘍辺縁の線維化が目立った。BRAF変異は年齢と相関し被曝の有無とは関係しないことを明らかにした。低ヨード環境は小児甲状腺癌の発生頻度の上昇、潜伏期の短縮、充実性形態変化に影響を及ぼしていることが推察された。 これらの生体試料を用いゲノムDNA解析がなされてきたが、放射線特異的な遺伝子変異は見いだされていない。FOXE1(TTF2)の変異やATM、TP53gene、特定遺伝子群のSNPsなどDNA損傷応答遺伝子の多型性が遺伝子不安定に連なり甲状腺癌発症リスクになっている可能性が報告されている。53BP1核内フォーカスを用いたDNA修復・遺伝子安定性維持機構の損傷の解析、microRNA解析を継続的に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例集積は順調に進み、23年度には326症例の生体試料採取とデータの登録が完了できた。約2400症例のウクライナ症例の形態解析を行い発表準備中である。53BP1は甲状腺濾胞細胞で解析が進行し、一部結果は学会に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
福島第一原子力発電所の事故が発災し、放射線被曝による甲状腺発癌リスクに関する関心が高まっている。チェルノブイリ組織バンクと連携し生体試料の収集を引き続き行う。症例ごとの推定被曝線量、病理形態、解析された遺伝子変異がデータバンクに集積されているので、これらのデータを活用しつつ、新たな遺伝子変異を検索していく。遺伝子変異の一つのターゲットに53BP1を定め、生体試料や実験動物を用いて解析していく。
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