研究課題/領域番号 |
22590347
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鬼丸 満穂 九州大学, 医学研究院, 助教 (00380626)
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研究分担者 |
米満 吉和 九州大学, 薬学研究院, 客員教授 (40315065)
池田 康博 九州大学, 医学研究院, 助教 (20380389)
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キーワード | 糖尿病微小血管障害 / Tie-2 / 可溶型変換 / PKC |
研究概要 |
平成23年度は、平成22年度に明らかにしたTie-2可溶型変換機構とそれにより産隼される分子量の異なる二種類の可溶型Tie-2{115kDaの可溶型(115-sTie-2),115kDaの可溶型(75-sTie-2)に関し、その病態生物学的意義を中心に研究を行った。その結果、正常マウスの大腿筋肉を含む各主要臓器には主として115-sTie-2が存在し、その発現程度は臓器により異なり、腎臓、肺に高い事が明らかとなった。一方、血中には115-sTie-2と75-sTie-2の双方が同程度存在する事が明らかとなった。血中に存在する75-sTie-2がいかなる臓器で産生されるかは同定出来ておらず現在解析中である。また、STZ誘発糖尿病マウスを用いた検討では、コントロールマウスと比較して大腿筋肉中の可溶型Tie-2の発現状況、つまり濃度や可溶型のタイプに特段の差を認めなかった。一方、ヒト硝子体液中の可溶型Tie-2は、糖尿病の初期病変である黄斑浮腫あるいは進行病変である糖尿病増殖性網膜症の罹患患者において非罹患患者と比較し有意にその濃度が高い事、発現亢進している可溶型は115-sTie-2と75-sTie-2の双方であることが明らかになった。しかしながら、このヒト硝子体液中の可溶型Tie-2発現亢進は、血管透過性亢進による血漿中の可溶型Tie-2が硝子体液中に漏れでた結果である可能性があり、血管内皮細胞が発現する全長Tie-2が可溶型に変換された結果生じるものかどうかは動物モデルでの検討が必要である。今後はSTZ誘発糖尿病マウスやob/obマウスにおける病的状態誘導時(例えば虚血下肢や網膜症誘導時)における可溶型Tie-2の発現状況や全長Tie-2の発現状況の検討が必要と考えられた。また、近年血管内皮細胞が発現するTie-1のAng-1/Tie-2システム機能修飾の報告がなされている。このTie-1はPKCシグナル依存性に可溶型に変換されることも知られている。よって、Tie-2の可溶型変換に加え、Tie-1の可溶型変換機構とAng-1/Tie-2システム機能への影響に関する検討も必要であると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養系におけるTie-2可溶型変換の分子機構はおおむねその全貌が明らかとなったことは計画通りに研究が進行していると考える。一方、その可溶型変換機構の複雑性も相まって、培養系で認められた分子機構と糖尿病病態との関連性が未だはっきりしていない現状がある。今後、高血糖状態を背景とした種々の病態モデルを用いた検証が必要となり、作業仮説に対するin vivoも含めた研究結果が出そろうにはそれなりの時間を費やすと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究計画は、糖尿病病態とTie-2可溶型変換機構との関連性に注目したものであるが、Ang-1/Tie-2 system機能に影響を与え、かつ受容体可溶型変換に関与する因子としてTie-1がある。このTie-1はTie-2と細胞外ドメインを介してTie-2と複合体を形成し、Tie-2機能を修飾する事や、PKC依存性に可溶型に変換される事が報告されている。そこで、本研究の目的からして、糖尿病病態とTie-1との関連性を解析する事は必須であると考え、今後研究計画に盛り込んで行きたいと考えている。その事により、特にin vivoの実験のデータ解釈に厚みが増し、Ang-1/Tie-2 systemと糖尿病病態との関連性がより明確になる可能性がある。
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