研究概要 |
平成24年度は、血管安定性制御に重要な役割を果たすAngiopoietin (Ang)/Tieシステムにおいて、未だリガントガ同定されていないチロシン型受容体Tie-1に関し、主としてTie-1可溶型変換機構に着目して解析した。血管内皮細胞が発現するTie-1はwestern blotにおいてグリコしレーションの違いにより分子量の異なる二つのバンド(high molecular Tie-1/HM-Tie-1, low molecular Tie-1/LM-Tie-1)として認識される。VEGF-AやPMAによりPKCが活性化されると、HM-Tie-1のみ可溶型に変換される事が明らかになった。また、Tie-1はTie-2と細胞外ドメインを介し複合体を形成する事が知られているが、この複合体形成に関与するTie-1はHM-Tie-1のみであり、VEGF-AやPMAで活性化された血管内皮細胞では、HM-Tie-1の可溶型変換に伴い、Tie-2との複合体形成が阻害されることを見いだした。一方Ang-1によるTie-2を介したTie-1 transactivationは、VEGF-AやPMAで活性化された血管内皮細胞(Tie-1, Tie-2複合体形成が阻害された状態)においても誘導されることが確認され、このtransactivationに複合体は必要ない事が明らかとなった。加えて、in vitroにおいて血管内皮細胞が発現するTie-1をノックダウンすると、VEGF-A依存性ERK1/2活性化が亢進されるという新たな知見を見いだした。このことは、Tie-1がVEGF-A/VEGFR2システムを負に制御していることを示唆する。今後はTie-1に関する生化学的知見をさらに深めると共に、それら知見を統合する事によりTie-1の病態生理学的役割を明らかにする研究へと発展させなければならない。
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