研究課題
脂肪酸蓄積状態の培養平滑筋細胞の形質転換を観察する系を樹立した。ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞にオレイン酸100-1000μMを前処置し泡沫化形質とし、脂質(トリグリセリド)沈着状態をOil-redOまたはLipidTox法で確認、平滑筋細胞はオレイン酸の容量依存性に脂質沈着の増加を示し、同様の泡沫化はデカノイン酸、パルミチン酸や複合的な脂質を含むIntralipid添加でも観察された。中性脂肪分解酵素ATGLおよびその促進因子CGI-58の発現を蛍光免疫染色で認め、細胞への飢餓刺激によりATGLとCGI-58の共存が誘導された。ウェスタンブロットで定常状態の平滑筋細胞のATGL発現は比較的低く、オレイン酸添加による発現量の変化は見出されていないが、β酸化に関わるCPT1B、PDK4等の遺伝子の発現をreal-time RT-PCRで観察したところオレイン酸添加により発現量が増大、飢餓刺激やβ酸化刺激剤(GW501516)でも発現促進された。平滑筋細胞においても脂質をエネルギーとして利用する経路が存在し、ATGLやCGI-58の機能が関与しているものと推定される。泡沫化形質の平滑筋を0.5%FCS培地による同調期間48時間の後、PDFG等の外因性増殖因子を加え48-72時間後にWST-1アッセイを施行するとオレイン酸添加により軽度の増殖促進作用が認められた。一方、コンフルエントの状態から0.5%FCS48時間の条件下で収縮型形質を誘導、オレイン酸を添加し、48時間後にサンプルを採取、ウェスタンブロットで分化形質マーカーである平滑筋アクチン発現を観察したが、この条件下ではオレイン酸前処置の有無によるsmooth muscle actinの発現レベルの変化は明らかでなかった。引き続きATGL遺伝子の発現レベルの変化に対応した形質変化について検討したい。
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Cardiac Practice
巻: 22 ページ: 6-10