研究概要 |
1 C型肝炎ウイルス量に差のある肝組織から見いだされた、発現が異なるタンパク質:肝組織ウイルス量が400倍以上異なる肝臓組織について比較したところ、実質から90個、間質から27個のタンパク質(総タンパク質数の7.6%)が、ウイルス量により有意に異なる発現を示した。 2 高ウイルス群で発現亢進するタンパク質GOLM1(Golgi membrane protein 1):間質および隣接する実質領域で、高ウイルス群に2.3倍発現亢進するGOLM1に注目した。GOLM1は、門脈域の胆管が陽性を示す他、高ウイルス群では門脈域周囲の肝実質細胞が強陽性を示した。各肝実質細胞内ではapical poleに限局し顕著な極性を示した。ウイルス産生との関連を調べるために感染培養細胞系で検討したところ、感染に伴ってGOLM1 mRNAが2.3倍に発現亢進していた。siRNAによるノックダウン実験、感染前後での細胞内局在変化など検討を進め、GOLM1とウイルス産生との関連を明らかにしている。 3 細胞膜セリンプロテアーゼTMPRSS2による感染の活性化:細胞膜セリンプロテアーゼTMPRSS2の野生型と変異型を安定発現するHuh7細胞を作製し、セリンプロテアーゼ活性とC型肝炎ウイルス感染性を検討した。野生型TMPRSS2は、切断部位アミノ酸配列がQAR, QGRに対し高い活性を示し、発現細胞ウェスタンブロットではQSRで切断された活性型TMPRSSS2 24kDaが観察された。またインフルエンザウイルスHAも切断し膜融合を起こした。感染実験では感染性は増強し、TMPRSS2 siRNAによりノックダウンすると、その感染亢進が相殺された。ウイルス結合と侵入とを分けて感染実験を検討したところ、細胞セリンプロテアーゼの主な関与はウイルス侵入段階であった。現在ウイルス侵入に必須の膜融合について検討を進めている。
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