研究課題/領域番号 |
22590351
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
長尾 静子 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 准教授 (20183527)
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研究分担者 |
釘田 雅則 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 助教 (50440681)
柳生 茂 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 助教 (10200479)
吉原 大輔 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 助手 (70454402)
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キーワード | 嚢胞 / 核内受容体 / 細胞内情報伝達 / polycystic kidney / polycystic liver / ERK / PPAR / S6 |
研究概要 |
核内受容体peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)-γのアゴニストであるピオグリタゾンは、「亢進したcAMP/PKA/B-Raf/MEK/ERKとCa^<2+>/PI3K/AKT/mTOR/S6K/S6細胞内情報伝達」を抑制することが期待できる。そこで代表的な多発性嚢胞腎(PKD)の疾患モデル動物にピオグリタゾン(PIO)を投与し、(1)2つの亢進した細胞内情報伝達系の抑制によって、腎臓と肝臓の病態が改善されることを明らかにすると共に、(2)腎臓において、PKD関連遺伝子産物の変異により変化した細胞内情報伝達経路が、核内受容体の関与する細胞内情報伝達経路から受ける影響をDNAマイクロアレイで網羅的に解析し、治療薬の開発に繋げることとした。本研究では、常染色体劣性PKD(ARPKD)のモデル動物であるPCKラットに生後4から20週齢まで、10mg/Kg PIOを毎日経口投与し材料を採取した。免疫組織化学染色とウエスタン解析によって、腎臓ではcAMP/PKA/B-Raf/MEK/ERKおよびCa^<2+>/PI3K/AKT/mTOR/S6K/S6細胞情報伝達経路を経由し、肝臓ではcAMP/PKA/B-Raf/MEK/ERK細胞情報伝達経路に加えTGF-β細胞情報伝達経路を経由し、細胞増殖と線維化を抑制することで、PIOが病態の進行を抑制することを明らかにした。さらに、DNAアレイ解析によって、PIOがEGF、PDGFおよびJUK細胞情報伝達経路を経由する細胞増殖を抑制することを明らかにした。また、DNAアレイ解析によって、脂肪酸代謝の鍵酵素であるStearoy1-Coenzyme A desaturase 1(SCD1)が抑制されることが示唆されたので、定量PCRおよび免疫組織化学染色したところ、発現が抑制されることを確認した。これらのことから、核内受容体であるPPAR-γのアゴニストがPKDの病態進行を抑制することが示唆されたので、核内受容体が関与する細胞情報伝達経路の抑制が、PKD患者の治療に繋がると考えられ、今後臨床治験に発展することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、「多発性嚢胞腎(PKD)のモデル動物に、亢進した細胞内情報伝達経路を抑制する作用を持つ核内受容体のアゴニストを投与し、難治性疾患に指定されているPKDの治療薬開発に繋げるための研究を行なう」という研究目的であるが、核内受容体PPAR-γのアゴニストを、PKDモデル動物であるPCKラットに投与したところ、腎臓と肝臓における病態悪化が、複数の細胞情報伝達経路を経由し、細胞増殖と線維化を抑制することを明らかにし、核内受容体が関与する細胞内情報伝達がPKDの治療に寄与できる可能性を2年間で示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のこれまでの成果によって、核内受容体の制御がPKDの治療に寄与できることが示された。そこで、1)PPAR-γのアゴニスト様機能を有する別コンパウンドによるPKDの治療効果(候補物質は、PPAR-γのアゴニスト用機能を有する降圧剤であるテルミサルタン)、2)別の核内受容体の制御がPKDの治療に寄与できるか(候補核内受容体は、RXR)を複数のモデル動物(PCKラット、jckマウス、pcyマウス及びPKD1KOマウス)を用いて研究を推進していく予定である。
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