プロテアソームはユビキチンシステムと連動してユビキチン化タンパク質の分解を制御・実行する複合体であり、細胞周期、DNA修復、シグナル伝達、タンパク質の品質管理、ストレス応答、免疫応答などの多様な生命現象に関与している。本研究ではプロテアソームの機能異常と病態形成のメカニズムを解明するために、酵素活性の弱いサブユニットであるβ5tを全身発現させた遺伝子導入マウス(β5t-Tg)を用いた研究を進めている。期間中に(A)プロテアソーム機能の低下と老化・老齢病態、および、(B)β5tの異常発現と免疫疾患、の2つの病態メカニズムを明らかにする研究を展開しているが、本年度は特に(A)プロテアソーム機能の低下と老化・老齢病態に焦点を当てて研究を進めることで、以下の成果を得た。(1)β5t-Tgでは背骨の彎曲や皮下脂肪織量の低下等、老化に伴う表現型を伴った短寿命が認められた。(2)β5t-Tgでは細胞寿命に関わる多数の分子(Bcl-xL、RNaseLなど)の発現異常が認められた。(3)β5t-Tgではユビキチン化タンパク質や酸化変性タンパク質が増加していた。(4)β5t-Tgに高脂肪食を投与することで、コントロールに比べ有意な肥満や脂肪肝が誘導された。(5)β5t-Tgでは脂肪代謝に関わる分子であるADRPの発現異常が観察された。現在、β5t-Tgを用いた老齢病態モデルとして喫煙マウスの表現型解析を行っており、老年期に発症するCOPDとプロテアソーム機能の関連性について検討を進める予定である。また、異常発現と免疫疾患との関連に関しては、胸腺細胞の分化異常の有無について、TCRレパトア解析を主体に解析を進めている。
|