研究概要 |
HNF4αは肝臓で高発現する核内受容体であり、肝臓特異的HNF4α欠損マウス(HNF4α-KOマウス)は脂肪肝を示し、生後約10週間程度で死亡する。HNF4α-KOマウスとPPARαを欠損したダブルKOマウスは脂肪肝の改善と寿命の延長を示した。このため、HNF4α-KOマウス肝臓においてPPARαの活性化が脂肪肝と寿命延長に関与していると推測して、PPARαの活性化機構を解析した。リアルタイムPCRによりPPARα経路の遺伝子群の発現を比較定量したところ、HNF4α-KOマウス肝臓におけるPPARαのmRNA発現量が約40%に低下していることが分かった。また、PPARαとヘテロダイマーを形成するRXRαの発現に変動はなかったが、PPARαの標的遺伝子であるBIENは約4倍,MCADは約3倍,CYP4A14は約15倍,HMGCS2は約2倍といずれの遺伝子の発現もHNF4α-KOマウス肝臓で上昇していることが確認できた。またウエスタンブロットによりHNF4α-KOマウスにおけるPPARαタンパク質はmRNAレベルと同様に発現低下していることが分かった。次にPPARαのPPARα結合配列(PPRE)への結合能をゲルシフト法により解析したところ、HNF4α-KOマウス肝臓のPPARαはBIEN,CYP4A14,HMGCS2の3つの遺伝子のPPREすべてに対してDNA結合能が低下していることが明らかになった。以上の結果は、HNF4α-KOマウスにおいてPPARαは発現量とDNA結合能ともに低下しているにも関わらず、転写活性化能が上昇していることを示唆している。また、ヒトPPARαの機能を特異的に抑制するアプタマーを取得するために、ヒトPPARα発現ベクターを作製して大腸菌での発現系を構築した。
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