研究成果:1)ヒトX連鎖型慢性肉芽腫症モデルマウスのスクリーニング法の確立:gp91^<phox>遺伝子変異マウス(X-CGD)のスクリーニングに用いたAPF色素アッセイ法は、従来法に比べ(1)簡便な手順で活性酸素産生陽性と陰性の好中球が明確に区別でき、(2)色素染色後に時間が経過しても非特異的陽性所見は認めず有用であることが示された。 2)遺伝子治療モデルの確立:X-CGDマウスより骨髄造血幹前駆細胞を採取し、レトロウイルスベクターを用いて治療標的であるgp91^<phox>遺伝子と導入マーカーとしてのKusabira Orange(KO)遺伝子を導入しX-CGDマウスに移植した。移植された細胞はほぼ全てがKO陽性であった。移植後の末梢血好中球の解析ではKO陽性にも関わらずAPF輝度が陽性と陰性の細胞集団に明確に区別された。当初、APF輝度とKO輝度は導入効率により並行するものと予測していたので興味ある結果となった。遺伝子治療の臨床上の問題点として、gp91^<phox>遺伝子が導入されているにも関わらず末梢血好中球では活性酸素産生陽性と陰性の細胞集団が認められることが知られている。本結果は臨床上の問題点を解決するためのモデルとして有用である。遺伝子導入後に末梢血好中球のgp91^<phox>発現を確認するため抗マウスgp91^<phox>抗体使用にて解析を試みたが明確な結果は得られなかった。今後、ヒトgp91^<phox>遺伝子をX-CGDマウスに導入し抗ヒトgp91^<phox>抗体にて同様な解析を試みる。 3)治療効果確認の方法:従来、真菌を経気道的に投与する方法が行なわれている。真菌菌体成分の耳朶への皮下注射ではX-CGDマウスにおいて投与部位に好中球の蓄積が顕著であった。本法は安全且つ簡便であり治療効果を確認するうえで有用である。
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