研究概要 |
以下の3点について報告する。1.中心体制御に関わることが示唆されている遺伝子を含む10遺伝子EGFR,ERBB2,EPHB3,PIK3CA,MET,PTK7,ACK1,STK15,SRC,HCK(100キナーゼ遺伝子の中から、これまでに胃/肺/大腸がん計60例での検索から抽出されたもの)について、365例の原発性胃がん検体での遺伝子増幅率を明らかにし、臨床病理因子との関連性を示した。2.8-ヒドロキシグアニン(80HG)などの酸化的損傷塩基の除去修復に関わるMUTYHは、OGG1とdouble knockoutさせると、その細胞は、酸化的ストレス誘導下で中心体過剰複製を起こしやすいことが知られている。このMUTYHの胃がんとの関連を今回検討した。胃がんにおけるMUTYHのmRNAおよび蛋白質発現レベルの低下が示された。また、がん部での発現レベルに応じて胃がんを2群化すると、MUTYH低発現は独立した予後不良予測因子になることが多変量解析により示された。最後に、MUTYH発現レベルの異なるAGS胃がん細胞亜株を樹立・解析し、MUTYH発現レベルが、(1)A:80HG塩基対に対する修復活性、(2)80HGによるin vivo突然変異誘発に対する抑制活性、(3)細胞増殖抑制活性、を胃がん細胞内で規定していることを明らかにした。3.中心体制御に関わることが示唆されているPLK4遺伝子について、各種ヒトがん細胞株での発現レベルを検討したところ、胃がん細胞株での過剰発現が示された。さらに、原発性胃がんでの検討でも過剰発現が示された。そこで、AGS胃がん細胞株でのPLK4発現誘導株を樹立したところ、PLK4発現誘導により、中心体過剰複製、染色体不安定性が誘導されることが示された。以上のことから、PLK4過剰発現が胃がんの発生・進展に関わることが示唆された。
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