血管性ニッチを形成する細胞として毛細血管周皮細胞(pericyte)が挙げられるが、その実態が良く分かっていない。ヒトのpericyteの特異的マーカーが欠如することは、ヒトのpericyteの生物学的研究の進展を阻むものである。そこで、ヒトpericyte特異的マーカーを探索した。Pericyteと動脈壁平滑筋細胞特異的に発現するNG2(chondroitin sulfate proteoglycan)のpromotorによってDs-Redが発現するトランスジェニックマウスの肺からNG2 Ds-Red陽性/lineage marker陰性のpericyte rich populationと、肺のfibroblast rich populationをFACSによって採取し、gene profileを比較した。Fibroblastと比較して、pericyteに強くと思われる遺伝子は187個であった。Human protein atlasによって、187遺伝子のタンパク質の免疫染色パターンを検討した。45個のタンパク質の情報は無く、残り142個のタンパク質の免疫染色パターンを検討した。すると8個のタンパク質が毛細血管のpericyteに比較的特異的に発現していると考えられた。7個のタンパク質に対する抗体を購入し、免疫染色を行った。Melanoma cell adhesion molecule、fatty acid desaturase 3、myosin、light polypeptide kinase、myosin 1B、synaptopodin 2およびPDGFRBはヒトの多くの臓器のpericyteに発現していた。特にmyosin 1Bの発現はpericyteに選択性が高く、ヒトpericyteマーカーとして適していると考えられた。
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