DNA損傷応答は細胞死、老化、発がんをもたらす。一方、紫外線に対する免疫応答、すなわち光免疫応答は光線治療、および光線過敏症の背景を成す。このように両応答は病態と不可分の関係にあるが、その分子基盤に関する情報は限定的であり、人為的制御を困難なものにしている。本研究は小胞体分子MG23のDNA損傷応答への関与を示した研究代表者の実績ならびに同分子の紫外線応答特性に立脚して提案したものである。MG23の機能発現様式を切り口にして、DNA損傷応答と光免疫応答それぞれに固有の分子基盤を整理すると共に、両者のクロストークにまで踏みこむことを目指している。平成23年度には細胞株を中心的に用いて実施した解析を通して、以下の点を明らかにした。 1:MG23による細胞内シグナルの伝播機構にアプローチするために、同分子と物理的に結合するタンパク質を酵母2-ハイブリッド法でスクリーニングし、クリスタリンファミリーの一つを単離した。2:このクリスタリンタンパク質をノックダウンすると、紫外線感受性が亢進した。3:MG23とクリスタリンのダブルノックダウン細胞は各分子単独のノックダウン細胞と同程度の紫外線感受性を呈する。4:MG23はクリスタリンの発現を転写レベルで制御する。 以上から、MG23はクリスタリンと同一のシグナル伝達上に位置し、紫外線誘導性アポトーシスに対して細胞保護的に働くこと、ならびに、その背景には同分子による物理的・機能的結合分子クリスタリンの発現制御が存在することが示唆された。本成果は投稿中であり、紫外線への暴露に際して、小胞体タンパク質MG23が如何にして細胞の運命決定を左右するかについて、分子論的理解を推進するところとなった。
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