DNA損傷応答は細胞死、老化、発がんをもたらす。一方、紫外線に対する免疫応答、すなわち光免疫応答は光線治療、および光線過敏症の背景を成す。このように両応答は病態と不可分の関係にあるが、その分子基盤に関する情報は限定的であり、人為的制御を困難なものにしている。本研究はMG23の機能発現様式を切り口にして、DNA損傷応答と光免疫応答それぞれに固有の分子基盤を整理すると共に、両者のクロストークにまで踏みこむことを目指している。以下の点を明らかにした。 1.HEK293T細胞にsiRNAを導入して、小胞体タンパク質MG23をノックダウンすると、紫外線照射によって誘導される細胞死が亢進した。逆に同タンパク質を過剰発現すると、紫外線暴露時の細胞死が軽減した。したがって、MG23は紫外線によるDNA損傷に際して、細胞保護的な役割を担う。2.抗がん剤エトポシド(DNA二本鎖切断を引き起こす)処理に伴う細胞死に関して、MG23ノックダウン細胞が対象細胞と同様の感受性を示す一方で、MG23の過剰発現によって亢進した。紫外線によるDNA鎖内架橋への影響を検討した1.の知見と合わせると、MG23はDNAの損傷パターンの違いを検出する細胞システムの構成員である事が示唆された。3.細胞内シグナルの伝播機構にアプローチするために、MG23と物理的に結合するタンパク質を酵母2-ハイブリッド法でスクリーニングし、熱ショック蛋白質の一種αBクリスタリン(aBC)を単離した。aBCをノックダウンすると、紫外線感受性が亢進した。また、MG23とaBCのダブルノックダウン細胞は各分子単独のノックダウン細胞と同程度の紫外線感受性を呈したことから、MG23はaBCと同一のシグナル伝達情報経路上に位置し、同タンパク質との相互作用を介して、紫外線に対する細胞保護機能を発揮している可能性が示された。
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