研究課題/領域番号 |
22590363
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
今村 隆寿 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (20176499)
|
キーワード | C5a / 癌 / 浸潤 / MMP / 運動性 / プロテアーゼ / CD88 / 受容体 |
研究概要 |
補体5因子aフラグメント(C5a)の癌細胞運動性への作用をさらに明らかにするために、細胞の動きを10分毎24時間ビデオ撮影しその軌跡を測定して移動距離を比較した。C5a受容体(C5aR)発現癌細胞(HuCCT1/C5aR)は100nMのC5aで刺激した場合のみ約3倍動きが活発化したが、C5aRを発現しない癌細胞(HuCCT1/mock)では動きの亢進はみられなかった。C5aがHuCCT1/C5aRの浸潤性を亢進することをMatrigel chamber assayで昨年報告したが、この現象のin vivoでの再現性を調べるために、HuCCT1/C5aRを赤色蛍光で、HuCCT1/mockを緑色蛍光で別々にラベルし、C5a 100nMで刺激した後混合し、各々3x10^6/ml混合液50μlをヌードマウス皮膚下に注射した。一日毎に3日までの皮膚組織を採取し、厚さ4μmの凍結切片を作製した。移植した癌細胞の皮膚浸潤による広がりを蛍光顕微鏡で観察した。赤色蛍光点と緑色蛍光点の分布領域の周辺を線で囲み、各々の分布面積をイメージングプロセッサー(VH-analyzer, KEYENCE)で測定した。HuCCT1/C5aRはC5aで刺激した時のみHuCTT1/mockより広く浸潤し、最大1.8倍の広がり(2日目)がみられた。C5aで刺激しなかった場合は両細胞に広がりの違いはみられなかった。 これらの結果から、C5aがC5aR発現癌細胞の運動性を活発化し、浸潤を亢進する作用はマウスの皮膚への癌細胞移植実験に於いても再現されることが明らかになった。癌微小環境で産生されるC5aは異所性にC5aR発現する癌細胞の浸潤を亢進し進展を促進することが示唆された。これは、癌細胞におけるC5a-C5aR系の役割の初めての解明である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目までに達成する計画の癌細胞のヒト癌でのC5a受容体発現、培養癌細胞株でのC5a受容体発現、さらに、受容体発現癌細胞のC5a刺激による運動性、及び浸潤性亢進効果をin vitro、in vivo両方で明らかにし、癌細胞によるC5からC5a産生能もほぼ検討が終了し、計画に無かった転移への効果についても検討を加える計画である。
|
今後の研究の推進方策 |
1.C5からC5aを産生する癌プロテアーゼの同定-プロテオミクス解析を行う。 2.C5aによるC5a受容体発現癌細胞の転移促進効果の検討-ヒトの癌細胞を使っているので、拒絶反応を起こさないヌードマウスに移植して、肺転移を調べる。 3.C5a-C5a受容体系をターゲットにした治療法の試み-C5a受容体を発現するマウス癌細胞を作成して、これを正常マウスに移植して、C5a受容体を抗原とした免疫の癌進展への抑制効果を調べる。
|