研究課題/領域番号 |
22590367
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
及川 恒輔 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70348803)
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研究分担者 |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
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キーワード | キメラ遺伝子 / TLS-CHOP / 粘液型脂肪肉腫 |
研究概要 |
粘液型脂肪肉腫では、染色体転座に起因するTLS-CHOPキメラがん遺伝子産物が腫瘍発生において重要な役割を担っていると考えられている。しかし、その具体的なメカニズムはまだ不明である。本研究は、その腫瘍化機構においてTLS-CHOPとの関連が示唆される分子について検討を進め、TLS-CHOPの機能を明らかにするとともに、TLS-CHOP及び関連の分子を指標または標的とした新規の診断及び治療法の開発の可能性を探るものである。本研究は以下の2つの項目において研究を進めている。 1.TLS-CHOPによるがん抑制遺伝子MOA-7の発現抑制機構の解明。 既に申請者らの研究により、がん抑制遺伝子MDA-7の発現をTLS-CHOPが抑制する可能性が強く示唆されていたが、23年度の研究においてそれを確実に示すことが出来た(投稿中)。また、このMda-7発現抑制には、TLS-CHOPによる特異的microRNA群の発現誘導が介在することが示唆され、そこに関与するmicroRNAの候補も挙がってきている。しかし、まだ対応するmicroRNA群の完全同定には至っておらず、現在鋭意努力中である。一方、Mda-7の発現制御とは直接関係無いが、TLS-CHOPにより発現抑制されるmicroRNAの中で、粘液型脂肪肉腫細胞に導入すると細胞増殖を抑制するものを同定した(投稿準備中)。 2.PRG4の腫瘍化機構の解明。 PRG4は、TLS-CHOPに発現誘導され、トランスフォーム活性を持つ。ヒトPRG4には6種のvariantが存在するが、PRG4は正常細胞においても様々な機能を持つことが知られているため、個々のバリアントの機能的特異性を調べる必要から、全バリアントの発現ベクターの作成に着手している。しかし、PRG4の塩基配列の特異性のためか、未だに完成には至っておらず、さらなる技術的工夫が必要とされる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PRG4の発現ベクターの作成などには若干の遅れが見られるが、その反面、新たにTLS-CHOPに発現制御される、粘液型脂肪肉腫細胞の増殖に関わるmicroRNAの同定などに成功していることから、本研究テーマの大目標であるTLS-CHOPの腫瘍化機構の解明という点では、全体として概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Mda-7の発現を抑制するmicroRNAの同定とそのTLS-CHOPによる発現制御機構の検討などについては、程なく結果を出せると考えているので、今のペースで進めて問題ないと考える。一方、PRG4の発現ベクター作成の遅れについては、新しい方法や別の発現ベクター、様々なキット等の導入も検討して、色々工夫しながら進めていく必要がある。
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