粘液型脂肪肉腫の腫瘍発生には、染色体転座に起因するTLS-CHOPキメラがんタンパクが重要な役割を担っていると考えられているが、その分子機構の詳細は未だ不明である。本研究は、TLS-CHOPの機能を明らかにするとともに、TLS-CHOP及びその関連分子を指標または標的とした新規の診断及び治療法の開発の可能性を探るものである。 1. TLS-CHOPによる特異的microRNAの発現制御を介した癌抑制遺伝子MDA-7の発現抑制機構の解明 24年度は、粘液型脂肪肉腫治療の分子標的としてTLS-CHOPの有望性を示すとともに、TLS-CHOPによるMDA-7発現抑制が腫瘍細胞維持に重要であることを報告する原著論文を発表した(Br J Cancer)。しかし、MDA-7発現抑制に介在するmicroRNA群については、その機能を強く示唆するものが選別されてきてはいるものの、まだその確定には至っていない。一方、TLS-CHOPが腫瘍増殖・転移促進因子PAI-1をターゲットとするmiR-486の発現を抑制し、結果としてPAI-1の発現誘導をすることを明らかにした(Biochem Biophys Res Commun)。 2. TLS-CHOPに発現誘導される腫瘍化関連タンパクPRG4のがん化促進機構の解明 複数のsplicing variantを持つPRG4は、TLS-CHOPに発現誘導されトランスフォーム活性を持つ。そこで、各variantの機能的特性を調べるためにそれらの発現ベクターの作成を行なっているが、PRG4の長い繰り返し配列など特徴な遺伝子配列のせいかPCRがうまく行かず、未だ検討中である。一方、マイクロアレイ等の検討から、TLS-CHOPが数種の分子による分子カスケードを経てPRG4を発現誘導することを示唆する結果を得た。現在、この介在分子の確定を急いでいる。
|