1)感染細胞の同定; 感染初期に脾臓のT細胞、B細胞のマーカーを持ったリンパ球のほか単球系の細胞など、検索したすべての細胞種にウイルスの脳内接種後12時間で感染が広がっていることが明らかとなった。中枢神経では脳室壁を構成している細胞群は繊毛を多数持った脳室上衣細胞 (ependymal cell; E細胞) のほか、アストログリアのマーカーであるGFAP 陽性の神経幹細胞の性質を保有した細胞 (B1 細胞) が、E細胞を取り囲むようにしてE細胞直下に並び、B1細胞の一部は脳室内面に細胞突起を露出させている。B1細胞が神経再生のニッシェを構成しているほか、神経細胞の維持にも重要な役割を果たしている可能性がある。脳室壁のネスチン陽性の幼若細胞が感染していることを明らかにし、海綿状脳症形成にこれらの幼若細胞への感染が関与している可能性が示唆された。 2)サイトカイン産生; MCP-1陽性幼若細胞が脳室周囲で増加していた。感染後48時間でMCP-1量が脳内および脾臓で増加していることを確かめた。 3)ウイルス遺伝子発現系の構築; 我々が用いたウイルス株srr7 のエンベロープに局在するスパイク蛋白質をコードする遺伝子に変異が入った変異株を分離した。変異株の中のMu-3株がレセプター非依存性感染能を獲得したこと、および海馬CA3領域にアポトーシスを誘導することを見出した。ウイルス抗原の分布がsrr7株とも、またsrr7の親株であるCl-2株とも異なっていることが示された。ウイルスの変異により感染ルートが異なることが示された。
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