可溶性レセプター抵抗性ウイルス変異株srr7は神経病原性マウス肝炎ウイルスMHV-JHM株から分離されたcl-2株由来の変異株である。srr7を接種したマウスの脳内では感染後48時間で海綿状脳症の初期病変となる空胞変性の形成が始まり、脳室周囲の細胞にウイルス抗原が認められた。10年間にわたる継代の結果、srr7の病原性が高くなったので、リクローニングを行い5種の変異株を得た。いずれもS蛋白をコードする領域に1-2箇所のアミノ酸変異を誘導する変異が認められた。これらの変異株の病原性を確かめたところいずれもcl-2に近い高い病原性を示した。ベクター系でS蛋白の発現実験を行い、高い病原性の獲得は主要レセプターに非依存性に感染することを可能にした、このS蛋白の変異によることを確かめた。これらの変異株の侵入経路を調べたところ、最初にウイルス抗原が認められる場所に差は無かったが、その後の広がりに違いが見られた。この違いが、細胞外マトリックスによるウイルスの脳内への侵入経路の違いによって生じている可能性が示唆され、今後の海綿状脳症発症機構の解明に新たな展開が期待されることになった。
|