研究課題/領域番号 |
22590369
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岩本 隆司 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (60223426)
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研究分担者 |
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
上山 知己 京都府立医科大学, 医学研究科, 講師 (80379388)
中山 晋介 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30192230)
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キーワード | マイクロRNA / 大腸癌 / トランスジェニックマウス / c-Myc / p68/p72 / 心不全 / 心筋細胞 |
研究概要 |
我々が作成したmiR-143を全身に強発現するCAG/miR-143トランスジェニックマウスを家族性大腸腺腫症モデルマウスであるAPC_<Min>マウスと交配したところ、小腸での腫瘍発症は半減し,意外にも小腸腫瘍では内在性miR-145も高い発現を示した。これらの腫瘍ではmiR-143の標的遺伝子であるERK5およびmiR-145の標的であるc-Mycのみならず、RNAヘリカーゼであるp68/p72も発現が低下していた。さらにヒト大腸癌細胞株DLD-1でもmiR-143とmiR-145の共発現がc-Mycの発現の低下に重要である事実を見出した。そこで、miR-143によるmiR-145の発現誘導のメカニズムを解析した結果、c-Mycの発現低下によるpri-miR-145の転写産物の増強が重要であることをqRT-PCR法を用いて明らかにした。これらの事実はmiR-143とmiR-145がp68/p72のみならずc-Mycの発現低下を介するポジテイブサーキットを形作ってAPC_<Min>マウスの小腸腫瘍を抑制している可能性を示唆する。一方、22年度までに我々が作成したCAG/miR-143/145のトランスジェニックマウスでは心拡大が頻発したが、23年度は心筋細胞におけるこれらのマイクロRNAの機能を検証するために、新たにαMHCの発現領域にmiR-143/145を連結した遺伝子を用いたトランスジェニックマウスを作製し、2系統樹立して解析した。CAGトランスジェニックマウスがむしろ心室壁の肥大を呈するのとは異なり、αMHCマウスでは生後2~3か月から明らかな心室壁の菲薄化を伴った心拡大を示し、その多くが心不全で死亡した。心エコーを用いた解析でこれらのマウスでは心臓の収縮不全が起こっていた。この事実は心筋細胞におけるmiR-143/145の持続的強発現がヒトの拡張型心筋症様の病態の発症に何らかの関連することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
APC_<Min>マウスにおけるmiR-143の過剰発現によりmiR-145が誘導される分子メカニズムの少なくとも.部分を明らかにできた。またこれらの成果は国際学術誌に投稿し、おおむね良好な評価を受けていて現在リバイス中である。一方、miR-143/145の心臓における機能をより詳細に検証するため心筋細胞特異的に発現するプロモーターを用いて新たにトランスジェニックマウスを作製することに成功し、興味ある知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
APCminとmiR-143のトランスジェニックマウスの交配実験により得られたmiR-143/145とp68/p72およびc-Mycの間で見出されたfeedbakck機構が他の癌抑制性マイクロRNAにおいて広く認められる現象かどうか明らかにしたい。また、心筋細胞特異的に発現するプロモーターを用いて作成したmiR-143/145のトランスジェニックマウスにおける心拡大および心不全の発症する分子メカニズムを明らかにする必要がある。さらにこれらがヒトの拡張型心筋症のモデルマウスとなりうるかどうか様々な角度から検証する。
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