研究概要 |
本研究では、大腸及び膵臓発がん過程におけるオステオポンチン(OPN)及びスプライスバリアントの発現を動物モデルを用いて調べ、その役割について検討する。本年度は、大腸発がん過程におけるOPNの発現の解析及びOPN欠損の大腸発がんへの影響の検討と、膵臓発がんにおけるOPN欠損の影響の解析を行なった。 1.ラット及びマウスにおけるAOM誘発大腸発がん実験において得られた大腸の正常粘膜および腫瘍におけるOPNおよびスプライシングバリアントの遺伝子発現を解析した結果、ラットでは非がん部粘膜でもOPNaの発現は認められ、がん組織では顕著な発現上昇(50倍以上)が見られた。一方、OPNbはがん組織でのみ発現が認められ、OPNcの発現は認められなかった。マウスモデルでは非がん部粘膜ではOP Na,b,cの発現はいずれも認められず、がん組織でOPNaの発現のみ認められた。 2.OPN(+/+),OPN(+/-),OPN(-/-)の各遺伝子型のマウスに大腸発がん物質であるAOMを10mg/kg体重の用量で週1回、6週間腹腔内投与し、約半年後に大腸の前がん病変及び腫瘍の発生状況について解析し、OPN欠損が大腸発がん過程に及ぼす影響を調べた。前がん病変のaberrantcryptfoci(ACF)の生成数に有意差はなく、大腸腫瘍の発生率はOPN(+/+)に比べOPN(+/-),OPN(-/-)でやや低かったが有意差は認められなかった。 3.膵臓特異的K-rasトランスジェニックマウスK-ras(+/G12D)ptfl(+/Cre)にOPN欠損マウスを交配し、OPN欠損の膵臓発がんへの影響を調べた結果、OPN(-/-)では、膵臓の微小がんの発生個数がOPN(+/+)に比べて有意に少なく、1cm以上の大きながんの発生は認められなかった。OPNは膵臓がんの進展に関与していることが示唆された。
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