同種造血幹細胞移植後のドナー細胞の生体内での動態を非侵襲的に観察できる生体内蛍光イメージング法の開発が目的である。同種造血幹細胞移植後にドナー免疫細胞によって惹起される移植片対宿主病(GVHD)の標的臓器の一つである皮膚に着目し、EGFP-トランスジェニック(Tg)マウスをドナーとしてドナー細胞の動態を非侵襲的に蛍光イメージングすることが可能なのか検討した。マウスに侵襲を与えることなく、同一マウスでの皮膚でのEGFP陽性ドナー細胞の動態を蛍光イメージングすることが可能であった。さらに耳介を観察することにより、ドナー細胞を単一細胞レベルでの解析あるいは血管内でのドナー細胞の動きをリアルタイムに観察が可能であった。またEGFP陽性細胞数を数えることにより、定量的にドナー細胞の耳介での浸潤や増殖を定量的に解析することもできた。この蛍光イメージングのシステムを用いることにより皮膚GVHDの増悪を定量的に評価することが可能となり、耳介にGVHDを制御あるいは増悪する薬剤を塗布することによって、新しいGVHDに対する薬剤のスクリーニング法を確立した。非侵襲性の蛍光イメージングは従来の凍結切片を用いたドナー細胞の同定法に比較して、凍結切片の作製が不要であることから迅速および簡便性に非常に優れている。また、非侵襲性であることから同一マウスの経時的観察が可能な点、さらには広範囲にドナー細胞の局在を解析することから定量性においても従来の方法に比べて優れていることが明らかとなった。今後、このシステムを用いて2種類の細胞が同時に観察できるマルチカラー生体内蛍光イメージによってドナー細胞の動態を解析する計画である。
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